初恋
初恋は実らないほうがいい。という人がいます。きれいな想い出にできるから、とも。もちろん初恋が実り、そのまま一生愛し続けて生涯を終えることができれば、それは素晴らしいことだと思います。
ある著名な宗教家が、その著書のなかで度々初恋の方の想い出を語っておられ、さぞ美しく聡明な方とご想像していたところ、ご高齢となり、どうしてもその方とお会いしたいと思ったそうです。そしてお会いした後のお話がこうでした。「会ってがっかりした。干からびた婆さんになっとった。」というのです。初恋のお相手の方には失礼ですが、読みながら納得してしまいました。その宗教家の奥様はほっとされたのではないかとご想像して。
愛するご主人の心が初恋の幻影にとらわれているままでは、奥様の献身は穴の開いた器に水を溜めるようなもの。そしてそのようなことはみんなお見通しのうえで、あけすけにお話をされるその宗教家の先生を、また好きになりました。
村下孝蔵さんはその代表作「初恋」で、「好きだよ」と口にすることさえできなかった初恋の淡さを、ゆれるふりこ細工に表現し、五月雨の頃の情景のなかにおさめました。初恋の想い出は、自身にとっても大事な宝物であったと思います。
村下孝蔵さんの告別式で、初めて奥様をお見かけしましたがおきれいな方でした。そのお姿を思い出し、同じ女性として、前記のようなお話を思いました。
作詞にしろ小説にしろ作品を創作するということは、全てが自己の体験から描かれたものではありません。過去に読んだ小説やテレビドラマなどから、或いは独自のフィクションを織り交ぜて創作することができます。ただ当事者の気持ちや感情は、やはり体験したものでないと表現できない場合があります。村下さんの作品には、当事者でないと、いえ、当事者さえ気付かないような感情の描写があり、ドキッとさせられるのです。
村下さんは、「恋」という移ろいやすい人の心の内面を、省略しないで描いているように思えます。ある時は別れの一場面を、またある時は恋人たちのくらしを、写真を見るように映像を見るように、丁寧に描写することにより、心象風景が立体的に受け手に伝わります。
創作するものにとって自分の作品は、公表した時から自分の手を離れることを覚悟しなくてはなりません。村下さんにとっても、どの歌も大事な分身のような存在であると思います。でもこれらの作品が、受け手一人ひとりの心で咀嚼され、実演され、翻案されていく。それがやがて文化となるのだということを、私は信じます。今では村下さんも、そのように人々の心に生き続けることを望んでいると信じています。 (君影草)
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コメント
すずらんさん、素晴らしいです。
こんな風にどうしたら、素敵な言葉で分析し伝える事ができるのですか?
すずらんさんご自身の作られる詩(詞)を是非読ませて頂きたい衝動にかられます。
村下さんの歌詞はどれも、物語を丁寧に描いてますが、詞という物は、実際はどちらが良いのでしょう?
私は、村下さんや金子さんの様に、その時の心情・風景・会話等いろんな情景がこちら側にも伝わってくるモノがとっても共感できるのですが、ある人は、物語をたらたら書いてるだけではダメという人も居ます。
だから、今の歌の中では、メロディさえ良かったら、どんな歌詞(言葉のつぎはぎ)でも、メロディにのってしまえば勝ち!!みたいなものもあり、またそういう歌が売れている事実も有りますよね。
作詞する上では、どんな事を重点的に組み立てる事がいいのかな?
と、長々真剣に書いてしまいました。
これでは、質問ですね~\(◎o◎)/!
投稿: bluetear | 2006年5月26日 (金) 22時41分
bluetearさん こんにちわ。
>だから、今の歌の中では、メロディさえ良かったら、どんな歌詞(言葉のつぎはぎ)でも、メロディにのってしまえば勝ち!!みたいなものもあり、またそういう歌が売れている事実も有りますよね。
確かに今はノリで作られた歌も多いですし、即興で作った歌の方が売れた、というようなことも聞きます。
制作の須藤プロデューサーのお話では、村下さんは流行や売れ筋ということではなく、いいものを作りたい、とおっしゃっていたそうです。(どこでのお話かは忘れましたが)
本当にいいものはあきないんですよね。村下さんの歌の場合は、その歌詞の奥深さ、演奏技術を必要とする曲、表現が難しい歌が多く、いつも新しい発見があるんです。村下さんは本当にいいものを作れば、いつかわかってもらえると信じていたと思います。考えてみれば古典音楽などは、何百年も演奏されているんですものね。すごいことです。
今はあまり物事を深く考えない人が増えていますから、軽い歌の方が受け入れやすいかもしれませんが、村下さんのような歌作りをする人がいて、それを引き継いでくれる人がいればうれしいですよね。
そうそう、若手デュオの平川地一丁目のお二人が、「初恋」に続き「松山行きフェリー」をカバーリリースしました。この場を借りてお知らせです。
>すずらんさんご自身の作られる詩(詞)を是非読ませて頂きたい衝動にかられます。
キャーまだまだです。勉強中、勉強中…。
>作詞する上では、どんな事を重点的に組み立てる事がいいのかな?
これもいまだに、勉強中、勉強中…。
投稿: すずらん@管理人 | 2006年5月27日 (土) 14時21分
=^-^=すずらんさんCDGetしました。
それも、其の弐・其の参を!其の壱だけ無かったそうです。でも、喜んで帰って来ましたよ(*^-゚)vィェィ♪
主人にすずらんさんの「ひそかに映画化」を話したら、「村下さんの歌は、絶対小説に出きる詩だね」って、私が書き込むより主人の方が、すずらんさんと熱く語れるかも・・・・。
投稿: tukushi | 2006年5月28日 (日) 20時28分
わ、よかったですね。ライブ版は聞きながら思わず体ゆすっててリズムを刻んでしまいます。(まわりに誰もいないことをいいことに…) 今日は半日仕事だったんですよ。村下さんを聞きながらね。(^0^)
いつか夢が叶うといいな~。ご主人にもよろしく!
投稿: すずらん@管理人 | 2006年5月28日 (日) 21時45分